PLANT LABO.

PLANT LABO. の日常の研究結果や考察をご紹介しています。

持続可能性について考える 第2回:アプローチ(後編)

ども。

暑い夏が続きますが、これと地球温暖化をつなげて考えたりはしない、

研究員第2号のケシです。

 

前回、

持続可能性をめざす方法論には2つの主義・派閥がある というお話をしました。

 

節約や抑制を奨励する マルサス派と、

技術革新を奨励すれば大丈夫とする ソロー派。

 

今回は、ロジャー・マーテイン(トロント大学)、アリソン・ケンパー(ヨーク大学)の論文(北川知子 訳)「地球を救う2つの理論」からの引用をメインに、この2つの議論を できるだけ面白く(ってかエキサイティングに)紹介しようとしてみましょう。

(論文の訳文がかなり素敵なのでそのまま引用する場合は『』囲いします)

 

 

+++2派の戦いの歴史

マルサスさんは もとは「人口増えすぎるから ご飯食べすぎるとやばい」と200年前頃に言い出して、一躍時の人になりました。

ところが、その後の農業の機械化は、彼の予測をはるかに上回り、その説は忘れ去られてしまいます。

 

その後、オイルショック時代に「エネルギーが足りなくなってやばい」という声とともに再び注目を集めます。しかし、その後 エネルギー価格は安定し、またもやマルサスさん(とその仲間たち)は「オオカミ少年」的ポジションにおいやられます。

 

どちらも、農業技術の革新、生産技術革新による生産性の向上 によって「危機(あるいは危機予測)」

をのりきってしまったため、ソローさん(節約しなくても大丈夫派)が「結果的に」勝利したかに見えました。

 

そして21世紀に入って、地球環境の問題や原子力の安全性をきっかけに またもマルサス派が主張を強めています。

 

マルサス主義者によれば、(中略)再生不能な資源を食い尽くすと同時に生態系を退化させる。(中略)我々は遠くで待ち伏せているに着実に近づいていて、やがてはぶつかるだろう。待ち受けているのは、自然災害、疫病、飢餓、などの悲惨な結末である。唯一の頼みの綱は、そこに至る歩みを遅らせることだ。』

『ソロー主義者によれば、技術革新とスピルオーバー(技術革新が別の業界の革新を促す:電話回線のためのトランジスタがコンピューターの脳になって無数の産業の生産性を高める等)によって生産性は劇的に向上し(中略)最も楽観的な予測すら上回る。技術とイノベーションいよって希少資源を長持ちさせる(つまりマルサスの壁を無限に遠ざけるか、もしくは単に壁をよじ登れるようになるか、どちらかが可能になる)と主張する』

 

+++

『2つの理論はまったく対照的だ。マルサス主義者は、ソロー主義者を「妄想に取りつかれた夢想家」だと考えている。(中略)イノベーションは素晴らしいが、ソロー主義者の考えるような万能薬ではない。

ソロー主義者は(中略)大衆を惑わせ、本来必要な節約の邪魔をするという危険を冒している。

 

ソロー主義者はマルサス主義者を陰鬱な原始回帰主義者と見なし、イノベーションに内在する可能性に抵抗し、結果として生活の質の向上を妨害するのではないかと恐れている。ソロー主義者は、制限ばかりの世の中になると、への衝突は遅らせることはできるかもしれないが、壁を乗り越える方法は決して見いだせなくなると懸念している。』

 

+++

これら2つの理論は どちらが正解か どうやら答えはまだ出ていないように見えます。

とはいえ、

少なくとも産業界や政治、国際社会では この2つをどのように組み合わせるべきか について

試行錯誤をはじめているようです。

 

炭素税やCO2排出量取引といった試みは、節約への圧力と同時に、技術革新への投資を促す原動力にもなることを期待しています。

市民、企業、自治体、国 といった各レベルで 様々な取り組みがなされていますが、そうした活動が、「2つの理論」」をどうmix させているか を見てみると、とても面白い構図 あるいは「成功の秘訣」が見えてきます。

 

それらの紹介はさておき(※)、次回からはいよいよ、

個別のテーマについて、これら2つの主義・派閥 の主張をたよりに 「持続可能性とは何か」を考えていく(研究所的にいうと、考察ですな)ことにしましょう。

 

 

最初にとりあげるテーマは、「原子力発電」か、または「食糧問題」について

考えてみるよてい。